無縁墓を見て極楽を感じ絵を描いた不染鉄という画家がいました。

その絵と出会い、僕はどうしても無縁墓を撮りたくなりました。

そこに極楽はあるのでしょうか。

穏やかな日差しの中、無縁墓地で佇むお地蔵さんは

優しい笑顔で迎えてくれました。

今回の個展では、

死後の”極楽”とそれに対する生前の”快楽”  二つの作品を並べてみました。

快楽と極楽

お墓は淋しいと言ふけどそうではないよ。

色々な人が澤山いてとてもにぎやかだよ。

男も女も若い人年より娘さん赤ちゃん

どんな人もいるねえ、元禄だの寛永だの

と書いてあるのもいる。

苔がついて、白緑色のはん点がついて

大変美しい。やがて夏が来る

夕立がふって皆んなぬれるだろう。

顔もからだもしづくだろう。

楽しいねえ。それにさ

扇風器もストーブもいらない。

洗たくしなくてもいつも美しい。

おなかがすかない。

此世にいる時はやさしい

美しい人もいただろう。

色っぽい目の年増女もいただろう

見たかったなあ。

がめつい奴もいただろう。

今は皆な仲良く、けんかもしない

いぢわるもしない。

この方がいいねえ。

幸せとはこれを言ふのか。

 

あぁ

成程成程

そうか。

それだから

極楽と言ふのか。

 

一人で静かにこれをかいていると

何だかとてもとても楽しくなってくる。

 

このお地蔵様達

は父のようでもありは母のようでもある。

今はなき忘れぬあの人のようでもある

先生や友達が出てくる

 

画をかいてるのではない

あの人をかいてるのである

涙が出そうになってくる、悲しいのではない。

なつかしさの身にしみる、うれしい涙である。

皆様のお墓まいりもちっとも

しないが、今思い出でむねが一パイ

になってこの画をかいているよ。

 

皆様は佛様だからそちらから

よく見えてるだろう。

たましいが通ふんだねぇ。

 

有名になれずこんな画をかくようになっちゃった

だけどいいよねえ。

 

不染 鉄

昭和43年5月1日夜

2020.4.9更新